幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「おじさんとおばさん、いないの?」

「いつものように仕事だよ」

「ご飯食べたの?」

「水は飲んだ」

それはご飯じゃない。
額に手をあてた。

「わかったわ……。うちにきて」

「今行く」

どうせお腹が空いたっていう理由だけで起こしたにちがいない。
ご飯を作って欲しくてわざと音を鳴らしたでしょ!
口で言いなさいよ、口で。
やれやれ、めんどうな……と思いながら、自分の部屋を出た。
おじさんもおばさんも息子が生き延びるためにカップ麺くらい置いていけばいいものを。
深月家(みづきけ)は昔から放任よね。
うーんっと背筋を伸ばしながら、階段をおりて一階リビングに行くと私の母が仕事をしていた。
料理研究家の母は料理がうまい―――だが、作らない。
どういうことなんだって話だけど、事実なんだからしかたない。
今も素敵な奥様を装うべく、テーブルセッティングの練習をしていた。
なによ、その花は。
花に興味なんかないくせに雑誌では『季節を感じられる空間で食事を』なんて書いてるんだもん。
もう料理研究家じゃなくて、詐欺研究家の間違いでしょ。

「お母さん。逢生がお腹空いたって」
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