幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
カウンターテーブルに肘をつき、寿実がコーヒーを飲む。

「でもね、プライベートも大事だから」

そう言った寿実は真顔だった―――腹の底からの本心ね、これは。

「それに関して異論はないわよ」

「奏花には幼馴染君がいるから、紹介しなくてもいいかなって思ったんだけどね」

げほっとチャイを吐きかけて手で押さえた。

「ただの幼馴染だしっ!それに今はまだ留学中よ」

「音楽院を卒業したんじゃないかったの?」

「卒業したけど、師匠について勉強中って言ってたから」

チェロの偉い先生に師事しているとかなんとか。

「連絡とってるの?」

「連絡というより生存確認よ」

毎日、電話がかかってくる。
自己管理を忘れるタイプの人間だから無視もできない。

「生存確認って……」

「自分のことに無頓着なのよ。ホームシックになって私が留学先まで行く羽目になったんだから」

チェロの勉強のためとはいえ、寂しいならどうして留学するのよ……
額に手をあてた。
私にはチェロ奏者の幼馴染がいる。
名前は深月(みづき)逢生(あお)
歳は私の二つ下で手のかかる弟のような存在。
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