幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「なんだ……。よかった」

弘部君は照れた顔で笑った。

「実は今日、人が足りなくて入場整理のスタッフとして今日は駆り出されていて」

首からスタッフ用のネームプレートをさげていた。
ドア付近に立って席がわからない人のために案内していたらしい。

「土曜日で仕事なんて憂鬱だなって思っていたんですけど、渓内さんに会えたから得した気分です」

そんなふうに言われると悪い気はしなかった。
しかも、逢生と同じ年齢のはずなのにしっかりしていて礼儀正しい。

「よかったら、渓内さん。コンサートが終わった後―――」

「あー!やだー。弘部君!?本当に仕事だったの?」

グッズ売場で会計を終わらせて戻ってきた寿実が弘部君を見つけるとすばやく駆け寄ってきた。
寿実はずいっと私の前に出る。

「てっきり私の誘いを断るための口実かと思ったわ」

「違います。本当に仕事で……」

なんだ……
寿実は弘部君とデートの約束をしてたんだ。
弘部君が仕事でデートできなかったから私に付き合ってくれた、そういうこと。
感じのいい弘部君のことだ。
こないだの飲み会で私の後輩や寿実が目を付けないわけがない。
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