幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「そう呼ばれたことが梶井さんにもあったでしょう?」

唯冬は目を細め、くすりと笑う。

「大昔な。ちやほやされるのは今だけだぞ。特に深月。お前はもっと協調性を持てよ。チェリストが他の奴に合わせられなくてどうするんだ」

「余計なお世話」

「深月は他の人に合わせられなくても私が合わせてあげるわよ」

唯冬も知久もその声に『面倒な奴が来た』という顔をした。
桑地(くわち)恵加(めぐか)だった。
梶井とは違う意味で相手をするのが疲れるタイプだ。

「ピアニストの桑地恵加さんかな?」

「はじめまして。チェリストの梶井さん。あんまり深月をいじめないでください。私のパートナーなんですから」

「パートナー?」

俺が聞き返すと桑地はにっこり微笑んだ。

「今回のコンサートに私もゲストとして呼ばれてるの。梶井さんの伴奏と私のソロデビューCDの宣伝もかねて」

「あぁ、期待の新人って桑地さんのことだったのか」

どうやら桑地は梶井と同じ音楽事務所に所属したらしい。

「梶井さんの出演のオファーと一緒に私のことも社長がねじこんでくれたのよ」

「うちの社長はやり手だなぁ」
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