幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「あー、女にやられた」

「ひいいいいっ!我が事務所の商品になんてことしてくれるんですかああ!」

誰が商品だ。
本音がダダ洩れしてんだよ。
渡瀬がぐいっと女の髪をつかんで凄んだ。
ひっと女が小さく悲鳴をあげる。

「コトによっては訴えますよ。梶井さんの体はお金になるんです」

「おい。やめろ、その言い方」

「て、手当を」

「いい。行くぞ。渡瀬。遅刻だ」

ハッと渡瀬は我に返り、真顔になった。

「そうですね。急ぎましょう」

「まっ―――」

女がなおも追いかけようとしたのを渡瀬が問答無用とばかりに目の前でバンッとドアを閉めた。

「行きますよ」

抑揚のない声。
ローヒールのくせにヒールが地面をえぐるんじゃないかというくらいに力強い。
渡瀬は大股で歩き、俺を置いていく勢いだ。

「よく俺があそこにいるってわかったな」

「事務所の社長から了承を得て、梶井さんにはGPSをつけてあるので」

「音楽事務所やめて探偵事務所でもやれよ」

「誰のせいですか。またおかしな女を選んで。今度は女性と心中騒動を起こさないでくださいよ。もみ消すのにどれだけ苦労したかわかっているんですか?」
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