幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「その大きな楽器なに?すごく素敵な曲だったけど、なんの曲?」

「うるさいガキだな」

「教えてよー!けちー!」

お稽古かばんをぶんぶんと振り回すとピアノの楽譜が落ちた。
お兄さんは落ちた楽譜に気付き、私が拾う前に拾ってくれた。

「ピアノ習ってんのか」

「うん。私はうまくないけど。逢生は上手だよ。ね、逢生?」

「ふつう」

「なんだ、この不愛想なガキ」

「変な音」

「うわっ……!生意気な奴だな」

逢生は私の後ろにさっと隠れた。
人見知りな逢生は初対面ではいつもこうだ。

「私はバイエルだけど、逢生はもう本を三つも終わってるんだから!」

「ふーん」

「もっと驚いてよ」

「俺の方がすごいし」

おとなげないってこういうこと言うんだなと思いながら、手にある楽器を見た。
にやりとお兄さんは得意気な顔で笑った。

「特別に教えてやるよ。これはチェロって楽器だ。さっきの曲はサンサーンスの白鳥」

「これがチェロ……。もう一回、弾いてみて」

「ガキが聴いてもつまらないだけだろ」

「そんなことない。綺麗な曲だったよ」

ふっとお兄さんは笑った。
笑うと優しく見えた。
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