幼馴染は私を囲いたい!【菱水シリーズ②】
「素敵な人だったなぁ……」

「奏花、あんな男が好き?」

「そうだねー。すっごくかっこよかったし。チェロを弾けるなんてすごいよね!」

「チェロを弾けたら、かっこいい?」

「うん!」

「わかった」

なにがわかったなんだろうと思っていると、逢生がぐいっと手をひいた。

「行こう」

「うん?」

逢生はこの日、突然ピアノ教室をやめると言い出して先生を困らせた。
止められたけど、結局、逢生はピアノをやめて数か月後、チェロを始めた。
なんて美しい思い出って―――あ、あれ?

「どうしたの?奏花」

「逢生がチェロを始めたのって……ううん、なんでもない」

まさかね?

「私はこれから弘部(ひろべ)君とデートなの。じゃあね、奏花」

「順調なのね」

そう言うと少しだけ寿実は表情を曇らせた気がした。
けれど、すぐにいつものように笑った。

「じゃあ、また明日ね!」

明るく寿実が言って、立ち去った後も私は雑誌の梶井さんを見ていた。
かっこいいっていうのもあるけど、私の記憶にある梶井さんより暗い表情をしている気がしてならない。
公園で会った時も確かに苦しそうではあったけど。
でも、これが歳を重ねるってことなのかな。
梶井さんのどこか影が差した表情が気になっていた。
< 91 / 213 >

この作品をシェア

pagetop