未亡人ママはスパダリ義兄の本気の愛に気付かない
そんな二人の会話を奈々子が、驚いたように目を丸くして眺めていた。
「椿・・・この方は?」
「えっと・・・信のお兄さん。先日、隣に越してきたの。」
「あら、信さんの!道理で声や顔がどこか信さんに似てると思った!」
「ご挨拶遅れました。俺は信の兄の久我山龍と申します。椿さんのお母様ですか?」
「はい・・・そうですけど。」
「何か困ったことがあったら何でも言ってください。椿さんのご家族は俺の家族でもありますから。」
「なに勝手なこと言ってるの!」
椿の言葉を意に介さず、龍は奈々子と握手を交わした。
「龍さん。お昼ご飯は食べた?」
奈々子の問いに、龍は頭をかいた。
「いや。仕事が終わってすぐに駆けつけたんで、まだ食べていません。」
「私が作ったお稲荷さん、まだたくさん残ってるから食べて?」
「いいんですか?ありがとうございます!頂きます!」
龍は早速いなり寿司を手に取り、一口でそれを食べた。
「ん!旨い!」
「嬉しいわあ。どんどん食べてね。」
奈々子の言葉に、龍はハイペースでいなり寿司を平らげていった。
「あなた、遠慮ってものを知らないの?」
「いや・・・お袋の作った弁当ってこんなに旨いものなんだなあ、と思ってさ。」
そういえば龍さんって愛人の子なんだっけ・・・
龍さんは運動会でお義母さんにお弁当を作ってもらえなかったのかな・・・
龍はサンドイッチにも手を伸ばし、それを口にした。
「これは椿さんの手作りか?」
「そうだけど。」
「うん。こっちも旨い!」
龍はそう言って椿に微笑んだ。