君が最愛になるまで
奏はそれ以上聞いてこなかった。
ちゃんと自分の口で違う、と否定できたことが私にとっては大きな1歩だと思う。


私の心の中でちゃんと千隼くんを信じられているんだと実感できた。
奏は自分の作ったうどんをずーっと吸って汁までしっかり味わっている。


私も同じようにお出汁の入った水面に自分の顔が映し出された。
その顔は曇っていて自分でも分かるくらい分かりやすく傷ついているようだ。


(こんな顔してたら奏が心配する)


「姉ちゃん。なんか食べたいものある?」

「突然だね」

「傷ついた姉に弟が優しくしてあげるよ」

「なんだかんだ優しいよね奏は」


恋心に気づいたとしてもその道のりは険しく簡単じゃない。
それでもこの忘れられない気持ちをなかったことにはできなかった。


せっかく再会できたのにまた離れるのは嫌だ。
千隼くんの近くにいたいと思うと同時にその恋心の行く先を私は決めかねていた。
< 28 / 49 >

この作品をシェア

pagetop