最後に名前を呼べたなら ―君の記憶と、永遠に―
意識
傘を畳んで靴箱にしまっても
あの時の空気が、まだ腕にまとわりついてる気がした
昨日のことは
別に何も起きてない
ただ、肩が少し触れただけ
声を交わしただけ
なのに
「……おはよ、悠」
隣から聞こえたその声だけで
一瞬で、心臓が跳ねた
「……おはよ」
いつもよりワンテンポ遅れた返事に
菜亜は何も言わなかったけど
こっちは、自分の心臓の音で頭がうるさい
「おい、なにニヤけてんだよ」
席に着いた瞬間
後ろから愛翔が肘で軽く突いてきた
「は?ニヤけてねぇし」
「嘘つけ。なあの方見ながら顔ゆるんでたぞ」
「……見てねぇって」
「“なあ”って呼んじゃってる時点でバレバレだろ」
愛翔のニヤニヤ顔が
妙にムカつくのに
否定する言葉が出てこなかった
……俺、そんなにわかりやすいか?
でもたしかに
昨日の声も
昨日の顔も
ちょっと思い出すだけで
息止めそうになる
昼休み
食べ終わったプリントの片付けで
ふと廊下でふたりになったとき
悠は
自分でも何がしたいのかわからないまま
ふいに口を開いた
「……あのさ」
「ん?」
菜亜が顔を上げる
「お前さ、昨日……」
言いかけて
悠は一瞬言葉を詰まらせる
その沈黙が
余計に意味を持ってしまいそうで
怖くて
でも
「……俺のこと、ちょっとは意識してんの?」
言ったあとで、やべえと思った
でも
顔は絶対に逸らさなかった
菜亜は一瞬驚いた顔をして
そして、目を逸らしたのはそっちだった
「……うん」
その一言に
呼吸が止まりそうになったのは
きっと、俺の方だった
「……なら、よかった」
そう呟いたあと
もう何も言えなくなって
その沈黙の中で
菜亜の指先が、袖の端をちょっとだけ掴んでたことに気づいた
“ちゃんと伝わってる”
その実感だけで
この日一日、心臓が持たなかった
あの時の空気が、まだ腕にまとわりついてる気がした
昨日のことは
別に何も起きてない
ただ、肩が少し触れただけ
声を交わしただけ
なのに
「……おはよ、悠」
隣から聞こえたその声だけで
一瞬で、心臓が跳ねた
「……おはよ」
いつもよりワンテンポ遅れた返事に
菜亜は何も言わなかったけど
こっちは、自分の心臓の音で頭がうるさい
「おい、なにニヤけてんだよ」
席に着いた瞬間
後ろから愛翔が肘で軽く突いてきた
「は?ニヤけてねぇし」
「嘘つけ。なあの方見ながら顔ゆるんでたぞ」
「……見てねぇって」
「“なあ”って呼んじゃってる時点でバレバレだろ」
愛翔のニヤニヤ顔が
妙にムカつくのに
否定する言葉が出てこなかった
……俺、そんなにわかりやすいか?
でもたしかに
昨日の声も
昨日の顔も
ちょっと思い出すだけで
息止めそうになる
昼休み
食べ終わったプリントの片付けで
ふと廊下でふたりになったとき
悠は
自分でも何がしたいのかわからないまま
ふいに口を開いた
「……あのさ」
「ん?」
菜亜が顔を上げる
「お前さ、昨日……」
言いかけて
悠は一瞬言葉を詰まらせる
その沈黙が
余計に意味を持ってしまいそうで
怖くて
でも
「……俺のこと、ちょっとは意識してんの?」
言ったあとで、やべえと思った
でも
顔は絶対に逸らさなかった
菜亜は一瞬驚いた顔をして
そして、目を逸らしたのはそっちだった
「……うん」
その一言に
呼吸が止まりそうになったのは
きっと、俺の方だった
「……なら、よかった」
そう呟いたあと
もう何も言えなくなって
その沈黙の中で
菜亜の指先が、袖の端をちょっとだけ掴んでたことに気づいた
“ちゃんと伝わってる”
その実感だけで
この日一日、心臓が持たなかった