私のお世話がかり

第二話 高校時代の私ですか?

 ◯居酒屋 夜
 双葉を含む四、五人がテーブル席に座っている。
 テーブルの上にお酒やノンアルカクテルが入ったグラスやサラダが乗っている。
 グループ内はシーンと静まり返る。

 双葉は思い出した。
 双葉「趣味はバレエ鑑賞です!」
 と言ったことを。

 双葉(失敗した……っ! 今言うとこじゃなかった! あーもう、どうして漫研なのに関係ないこと言っちゃったんだろ)
 顔を真っ赤にしてうつむくと、先輩たちが不思議そうに尋ねる。

 最上「で、でも、じゃあどうして双葉さんは漫研に入ったの?」
 部長「漫画読まないなら、文芸部でも写真部でも良さそうじゃない? 高校では何部だったの?」
 双葉「吹奏楽部です」
 湯本・宮内「おぉ〜」
 宮内「普通にいいじゃん」
 湯本「音楽続ければ良かったのに」
 双葉は思わずドキッとし、最上は気を遣ってプラバシーを守ろうとする。
 最上「大学生になってまで続ける人は少ないんじゃないか? ね、双葉さん」
 双葉「そ、そうですね……」
 双葉はテーブルの下で拳を固く握った。

 双葉 (高校時代も、思ってたのと全然違ったんだよね……)

 ◯回想高校の音楽室。
 窓からは夕日が差し込んで、机や床を橙色に染めている。
 生徒たちは楽器には目もくれず、机に座り大声で笑い声を上げている。

 モブ男子「お前らちゃんとやれって言ってるだろ、大会近いんだぞ」
 制服をきっちり着こなす眼鏡をかけた男子が、マレットを片手に叱る。
 モブ女子「大丈夫、大丈夫」
 モブ女子「やってもやんなくてもどうせうちら負けるんだから」
 短いスカートや靴下を履いた女子たちは、上履きを脱いで机に座ってスマホを見ている。


 窓から見えるのは、近くにあるオシャレな外観の私立高校。正面に「吹奏楽部全国大会出場」の垂れ幕。

 モブ女子「隣の私立にうちらが勝てるわけないじゃん。楽器の種類も先生の指導も、練習の量も全然違うんだよ?」
 モブ男子「だったら自主練すればいいだろ」
 男子は机を叩くが、女子は動じない。
 モブ女子「あのさー、今時、家で練習できる家がどれくらいあると思ってるの? 学校は、先生の働き方改革で遅くまでいれない、家は苦情来る、公園だってジジババに占領されてんの。勝ちに行くだけ無駄だって言ってんの」
 双葉はフルートを抱え、不安気にじっと見つめていた。
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