忘れられぬにおい

「ばぁか… さてはおぬし惚れたな?」

結香の声がおれの胸元で響く
音だけじゃなく振動が伝わってくる
それがおれにこの【恋】が本物だと認識させてくれる

「匂いがなくても おれはここにいる 結香《ゆいか》がいいんならおれは本気になるぞ?」

「あのさ、なんか勘違いしとらん?」

「ん? なんだ? やっぱおれ遊ばれてるの?」

結香《ゆいか》の言った『勘違い』って言葉にドキドキしてる自分がいた 冗談まじりに聞いた『遊ばれてるの?』が『YES』だったら…
結香の答えを待ってる間、胸の鼓動が早くなってるのがわかる
このドキドキが気づかれるのだけは避けたかった

「ちがうだろ? 本気になるぞ?じゃなくて本気じゃないならわたしに近づくな?」

そう言ったかと思うと結香は布団に潜っていった
ほんの数秒、結香《ゆいか》の言葉を理解するのに時間がかかった
その言葉を飲み込めた時、おれの胸はまた高鳴った


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