忘れられぬにおい
おれにとって今じゃ一緒に過ごす将来を夢見ることもできる存在になろうとしている
「あ、やべ、寝ちゃった」
おれがあちこち触ってたから目が覚めたのか結香が顔を起こす 一瞬のウトウトでもヨダレを垂らしていたのか胸が少し冷たく感じた
「ヨダレ出てた… ごめん」
おれの胸のヨダレを拭くより自分の顔についてるヨダレを拭きながら笑う顔がおかしくもあり、愛おしくもあった
「ねえ、歳の差って気になる?」
「ん? おれと結香《ゆいか》とのか?」
「あたりまえだろ、誰と比べんだよ」
「だよな… てかおれより結香だろ? おっさんだぞ?」
32歳と26歳、歳の差を気にするのは若い方だろ
「あぁー、わたし? わたしは気にならん」
おれの胸に垂らしたヨダレを手で拭いてるのか広げてるのかわからん動きをしながら笑っている結香
「わたしはさ、薫人《ゆきと》との未来まで考えれるよ? 子どもは何人とか…」
そう言って上目遣いでおれの方を見てくる
その仕草がいぢらしく見えて思わず結香を抱きしめる
「なにすんだよぉー」
「かわいすぎんだよ 抱きしめるのはおれの愛情表現だろ」
我ながらバカだと思う 自分の年齢も関係なかった
ただただ愛おしかった
この歳になってこんな【恋】ができるなんて思ってもみなかった