髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「もしかして……ケイリー様?」

 男性はステップを踏むことをやめ、ルシアナの手を離した。

「そう、僕だよ。ケイリー・スタインフェルド」

 これは予想外の方向に変貌を遂げていた。
 どうせあの輝かしいばかりの笑顔を振りまいて、お嬢さん方を次々と虜にしているものだとばかり想像していた。
 一体何がどうしたのだろうか。
 もしかしてルシアナが王宮に来ることを知って、わざわざこんなイタズラを?
 ……それにしては手が込みすぎているし、ケイリーはそういうタイプの人間じゃないと思う。
 それに……以前にはなかった影を、どことなく感じる。

「人は見た目じゃないって事を、実証なさろうとしているのかしら?」
「君は相変わらず、いい性格しているよ」

 くすくすと笑っても、髭のせいでエクボがよく見えない。
 年に数回やり取りする手紙では、ケイリーの変化など感じ取れなかった。と言っても、なんの他愛もない時候の挨拶に始まり、体を気遣う文で締め括られるだけの手紙だったのだけれど。
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