髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「この再会に戸惑われるかと思ったのに、まさか嫌味を言われるとはね」
「戸惑っているのは間違いありませんが……。つい嫌味を言いたくなるのは、最初の印象が悪かったからでしょうか」
「まだ根に持ってるんだ。やっぱり君、相当ねちっこいよ」
「よ、け、い、な、お世話、ですっ!」
「……」
「……」
ぷっ、と吹き出したのはどちらが先だったのか。
まだ一輪の花も咲いていない薔薇園に、二人の笑い声が響いた。
「もう少しだけルシアナと話したい。いいかな?」
「ええ。仕事は夕方までありませんので、時間ならたっぷりとありますわ」
ケイリーは何時ぞやのように、近くのベンチに取り出したハンカチを広げてくれた。
「……僕は君に謝らなきゃならない」
「え?」
「人は見た目じゃないなんて言ったけど、あれは間違いだった。君の言う通り、人は見た目だ」
何故そんなことを言うのか真意が分からずポカンとケイリーの方を見ると、悲しそうな目をしたまま、口元だけが緩く弧を描いた。
「あの……なにを言いたい――?!」
ケイリーが唐突に自分の前髪をかき上げると、よく見えなかった瞳が顕になった。
その瞳のすぐ近く、左側の額からこめかみにかけて、生々しい大きな傷跡が走っている。
「まさか、ドラゴンに襲われた時の傷跡ですか?」
「そう。ドラゴンの牙が頭に強く当たった時には流石に死んだと思ったよ。一時は意識不明の重体に陥ったのだけれど、医師たちが頑張ってくれたお陰で命は取りとめた。幸いなことに傷跡が残った他は、すっかり元の健康体に戻れたし、言うことないと思ったんだけどさ……」
ケイリーは前髪をかき上げていた手を下ろすと、その手をぐっと握りしめた。
「わたくしが知っているケイリー様でしたら、顔の傷くらい大したことないって言いそうですけれど」
以前のケイリーなら、例え顔に傷跡が残っても気にしないって笑いながら言いそうだ。
「僕も最初はそう思ってた。だから気にせず過ごそうとしていたんだ。けど……」