髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
 
「ええ。以前パーティーでお会いした時に。俺はあんまりダンスが上手くないのでね。あの時はどちらかというと、ベロニカ様に俺がリードされてしまいましたよ。はっはっはっ」
「パーティーですもの。楽しければそれでよろしいのでは? 私は楽しかったですよ」
「そう言って頂けると心が救われますよ。いやぁ、こんな素敵な女性と結婚できるとは、ウィンストン殿が羨ましい限りですよ」
「ははっ、まあダンスくらいはきちんと踊れないと華がないですからね。なんせほら、この見た目ですから」

 暗にベロニカの容姿が地味だと言いたいウィンストンに対して、マルティンは一瞬顔をしかめた。
 
「またそんなご謙遜を。そんなことを言っていると、すぐ他の男に掻っ攫われますぞ!」

 ウィンストンの肩を叩きながらもう一度笑ったマルティンは、「また後で」と言って別の男性に話しかけに行った。
 
 その後もウィンストンにはねちっこく嫌味を言われ続けたが、少しも気にならなかった。
 かつての自分は女性ばかりの茶会ならまだしも、男性も多く集まるパーティーに足を運ぶ事は憂鬱だった。
 けれど今は違う。
 ほんの少し自分に自信が持てたというだけで、こんなにも世界が変わるのかと思うほど、人と会うのが楽しい。ここ最近のベロニカは積極的に社交界へと足を運んでいるおかげで知り合いも多く、次々と挨拶を交わしてはお喋りを楽しみ、初めて会う男性ともダンスを踊った。

 ウィンストンのことなど、もう知らない。

 あんな人に、エスコートなどして貰わなくても構わない。

 先程会ったケイリー王子もまた、随分と雰囲気が変わっていた。
 ベロニカが王宮に到着してルシアナから、こっそりケイリー王子のことについて聞いてはいたが、あの髪型をみて大体の事情は把握できた。
 ケイリー王子もまた、ルシアナに救われたのだと。
 
 ケイリー王子はベロニカと話し終えてからずっと女性たちに取り囲まれてしまっているが、あの感じなら大丈夫だろう。
 なにせ、ルシアナを見るケイリー王子の視線が普通ではない。
 周りの女性たちを羽虫のごとくうっとおしそうに見るのに対して、ルシアナが他の男性に話しかけられる度に視線をぎらつかせている。

 ベロニカは心のうちでルシアナの幸せを願う。

 どうか妹は幸せな結婚が出来ますように、と。
 
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