髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

29. ルシアナ、急展開を迎える

 舞踏会が始まってから何時間経ったのか。すっかり夜は更けて、いつの間にか日付けが変わっている。
 まだまだ終わらないパーティーと、まだまだ女性達に取り囲まれているケイリー。

 まあ、こうなることは分かってはおりましたけど。

 心に渦巻くモヤモヤしたものを取り払いたくなったルシアナは、シードルの入ったグラスを手にバルコニーへと出た。
 外の空気はまだ少し冷たいが、お酒で火照った身体には丁度いい。風に乗ってやってくるバラの香りを堪能しながら、シードルを口に含んだ。

 うーん、やっぱりぶどうよりりんごよね。

 白ワインや赤ワインも飲んでみたが、やはりルシアナの口に合うのはこの、りんごで出来たシードルだった。

 ケイリー様は無事に復帰できたのだから、喜ばなくっちゃね。国王夫妻にもルシアナの腕前をアピール出来たし、ベアトリス様も舞踏会中あちこちでルシアナの開発した製品を売り込んでくれていたから、これからもっとヘアケア製品だって売れるようになる。
 何もかもが上手くいって万々歳じゃない。
 
 ムカムカしてくるような、泣き出したくなるような、訳の分からない感情が込み上げてきた。残っていたシードルを一気に飲み干したルシアナは、空になったグラスを近くのガーデンテーブルにトンッと置いた。

「シードルが美味しいからってそんなに一気に飲むと、酔いすぎてしまうよ」

 振り返った先にいたのはケイリーだった。近付いてくるケイリーに、ルシアナはふんっと鼻を鳴らした。

「ケイリー様こそ酔いつぶれて、お持ち帰りなどされないように気をつけた方がよろしいのでは?」
「そんなに酔ってないよ。それよりもルシアナが変な男に連れて行かれないか心配なんだ。僕の視界から居なくならないで」

 そっぽを向くルシアナの瞳を覗き込むように、ケイリーの顔が近くに迫ってきた。
 
 なんでそんなに真面目に答えるのよ……。

 いつもみたいに嫌味を嫌味で返してくれないケイリーに、ルシアナの言葉は宙をさまよった。
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