髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「ずっと言わなかったけど、貴方が薄毛を気にしているって知ってるんだから! 相手が気にしていることを言うのは良くないと思って触れないできたけど、貴方が私の気にしていることを口にして傷付けてくるのなら、お互い様だもの。言わせてもらうわ!」
「いや……ちょっ……」
「結婚式でカツラをつけろですって? カツラを流行らせたいのは、薄毛を隠したい自分の為でしょう?! それをあたかも私の為であるかのように言って!」
――あぁ、お姉様。ウィンストンの薄毛に気付いてたのね。
ルシアナももちろん気付いていた。ケイリーとウィンストン、ベロニカと4人でお茶をしたあの日、ウィンストンの頭頂部が目に入った時から。
相手の容姿を茶化してあげつらうのは好きじゃないので黙っていたが、ベロニカの方はとうとう我慢ならなくなってしまったみたいだ。
遠巻きに事の成り行きを見守っている人達は、手や扇子で口元を隠して肩を小刻みに揺らしている。
「私は自分のこの髪の毛が好きなってきたの!隠したくなんてないわ! カツラをつけたいなら貴方おひとりでどうぞ!! 」
「おい、ちょっと待て……!」
「婚約破棄されたくないのなら、まずは謝罪からよ」
「そうだぞ、ウィンストン君。立場を弁えろ」
立ち去ろうとするベロニカの肩を掴もうとしたウィンストンの手を、父が払い除けた。
「はっ!! なーにが謝罪からだ! どうせりんごを使ったヘアケア商材なんざ飽きられて、上手くいかなくなる。泣きついてくるのは最終的にはお前達の方だ!」
捨て台詞を吐いたウィンストンは、そのまま足早に会場から出ていった。