髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「ベロニカ。君は今、自分が何を言っているのか分かっているのか?」
「もちろん分かっています。ウィンストン様の方こそ、私の言うことをもう一度よくお聞きになって下さい。これ以上私と、そして私の大切にしている人達のことを侮辱するのは許しません。謝ってください」
母の隣についたルシアナは何があったのかと両親に目で聞くと、小声で教えてくれた。
「ウィンストンがパーティー間中、ベロニカに嫌味を言っていたみたいだけれど、耐えていたのよ」
「それは知ってますわ」
「それでね、ベロニカが領地運営について話し合おうとしたみたいなの。そうしたら彼がルシアナ、貴女を慎みがない女だとか、お父様を無能な領主だとかと悪口を言って、とうとうベロニカの堪忍袋の緒が切れたみたい」
「あーあ、なるほど」
母から事情を聞いている間にも、二人の応酬は続いている。
「謝れって何をだ? 全部本当のことだろう。だから俺が代わりに領主として、ルミナリアを変えてやるって言ってるんだ」
「ルミナリアは貴方の手を借りずとも、もう生まれ変わっています。カジノ計画は見直して下さい」
「いいや、必ず遂行する。りんご畑だらけのド田舎を変えてやろうって言うんだ。領民も喜ぶだろう? 領地が栄えて何が悪い」
「ルミナリアの民はそれを望んでいません。強引にことを推し進めようなんてしたら……」
「したらなんだ? あぁ? 言ってみろ」
ウィンストンを睨みつけたベロニカは、これまでの不満を全て吐き出すかのように、声を張り上げた。
「――婚・約・破棄! しますっ!!」
うわぁ、言っちゃった。いや、よくぞ言ってくれた! かしら?
ルシアナは心の中で拍手を送りながら、姉の勇気を賞賛した。父も母も異論はないらしく、頷いているだけで止めようともしない。
一方女性から婚約破棄を告げられたウィンストンはと言うと、顔をねじ曲げて笑っている。
「婚約破棄だとぉ? ――そんなことが出来ると思っているのか!? 誰がお前みたいな金のない、ジャングル頭のいも女なんて相手にすると思ってるんだ。勘違いも甚だしい。俺が嫁に貰ってやるって言ってるんだ! 髪が爆発しているだけじゃなく、とうとう頭の中までこんがらがって爆発したんじゃないのか?」
「……なんですって?」
前世で例えるならば、RPGで悪を召喚した時のような……とでも表現したらいいだろうか。
紫紺の渦がベロニカの周りを取り巻き、毛が逆だっているかのように見えた。
「爆発するような髪が無い貴方になんて言われたくないわ! このっ――薄毛野郎っ!!!」
「なっ……」
口をパクパクさせて固まるウィンストンに、ベロニカは詰め寄った。