髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

 事の顛末はこうだ。

 ベロニカが婚約破棄宣言をしたその数日後、ホルレグワス男爵をはじめとした、バルドー家の者たちの脱税が発覚した。それがまた実に巨額で悪質だったことから、バルドー家は脱税していた分のお金はもちろんのこと、多額の罰金を課せられて、借金を背負うこととなった。
 爵位までは失わなかったものの、買い漁っていた領地を失い信頼を失ったバルドー家は、射落とされた鳥のごとく一気に地に落ちた。

 そして、一族の存亡の危機に立たされたバルドー家が泣きついてきたのが、このルミナリア公爵家。ウィンストンだけでなく、ホルレグワス男爵家総出で公爵邸へやってきて、婚約破棄を取り消して欲しいと頭を下げたのだ。

 頭を床に擦り付け謝るウィンストンに、ベロニカは手を差し伸べて許してしまった。
 あんな心根の曲がったやつ、わたくしだったら、ざまぁみやがれと追い返してやるのに。
 でもそこが、ルシアナが姉を慕う所でもあり、自慢でもある。

 それに……と、ルシアナはケイリー達と楽しげにお喋りしているベロニカを見た。

 もう心配は要らない。

 今のベロニカなら、ウィンストンに何を言われても大丈夫だろう。むしろ、ここ最近の二人を見ていると、ベロニカがウィンストンを尻に敷いている状態だ。
 
「さあ、義理兄様。切りますわよ!」

 チョキチョキと髪切り鋏を動かして迫るルシアナに、カットクロスを付けられたウィンストンは、血の気の失せた顔で訴えた。
 
「な、なあ……。本当にやるのか? 失敗したらどうするんだ?」
「心配ご無用! ぜーんぶわたくしに、お任せあれ!」
「い……いやっ、やっぱり止めよう! 式は明後日なんだぞ?!」
「まあまあ、ウィンストン様。座って座って」

 椅子から立ち上がって逃げようとするウィンストンの肩を、上から抑えたのはケイリー。ケイリーの身長はすでに、ウィンストンより拳ひとつ分くらい高くなっていた。

「ウィンストン様は近い将来、僕にとっての義理兄様にもなるんですからね。カッコイイ自慢の兄になってもらいませんと」
「ええ。わたくし達の式まで薄毛が進行しないよう、出来うる限りのケアをして差しあげますわ!」

 ケイリーと二人、にこぉと笑いかけると、ウィンストンは肩を落として椅子に座り直した。
 その様子を見てベロニカとベアトリスが、お茶菓子のクッキーを食べながらくすくすと笑っている。
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