髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「じゃじゃーん! 出来上がりましたわ!!」

 長めの髪にオイルをたっぷりと付けてオールバックにしていたウィンストンの頭は、サイドをやや短めにカットして前髪を立ち上げた、アップバングショートになった。

「まあっ! すごいわルシアナ!! ウィンストン様が別人みたいに見える」 
「ええ、爽やかさが出て素敵ね」 
「それに以前よりずっと髪を短くしたはずなのに、むしろ薄毛だって分からないくらいだよ」

 絶賛する3人に気を良くしたルシアナは、ウィンストンに手鏡を渡して自分の姿を見てもらった。

「いかがです? 義理兄様」
「……本当だ。どうなってるんだ。短いのに……不思議だ……」
「薄毛が気になるとつい長く伸ばして隠そうとしがちですが、こう言うつむじの所が薄くなっている場合はむしろ、短くするのが正解ですわ」

 やりがちな事だが、髪を長くするとどうしても髪の毛が寝てしまう。そうすると地肌が見えやすくなってしまうので、短くして髪が立ち上がるようなヘアにした方が、薄毛をぼかしやすいのだ。

「それからドライヤーで髪の根元が潰れないようにフワッと乾かして、オイルをつける時には全体を根元から立ち上げるように。最後にピタッとさせる所はきちんと整えてメリハリをつけると、なおかっこよく仕上がりますわ」
「さすがルシアナだわ! ウィンストン様、カツラを被らなくたって充分素敵ですよ」

 歩み寄り一緒に鏡を覗くベロニカに、ウインストンは涙ぐんだ。

 今なら何故ウィンストンが、ベロニカの髪をあそこまで馬鹿にしていじっていたのか分かる気がする。
 ウィンストンはベロニカの同じように、自分の髪の毛に強いコンプレックスを抱いていた。
 けれど2人の反応は違った。
 ベロニカは内にこもる事で自分を守り、ウィンストンは他者を攻撃することで自分を守っていた。――そういうことだと思う。

「ルシアナ……」
「はい?」
「ありがとう」

 ボソリと呟くように言ったウィンストンに、ルシアナはわざと耳を傍に寄せた。

「聞こえませんでしたわ。もう一度お願いします」

 うぐぐっ、と顔を赤くしたウィンストンはバカみたいに声を張上げた。

「あーりーがーとーうーーーー! これでどうだ?!」
「ふふふっ! よーく聞こえましたわ、義理兄様」

 部屋いっぱいに広がる笑い声。

 かつての自分の夢。
 それは自分のヘアケアブランドを作ることでもなく、一等地に店を構えることでもなかった。
 
 魔法使いになりたい。

 沢山の人を笑顔にしたい。

 ルシアナは今、夢を現実に変えている。

「髪の毛の悩みなら、このルシアナ・スタインフェルドにお任せあれ! ですわ!!」




               おわり
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