髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

3. ルシアナ、決意する

「ルシアナお嬢様、盗み聞きなんてはしたない事はおやめ下さい」
「しーーっ! 静かにして! 話し声が聞こえないわ」

 ルシアナを窘めようとするモニカに黙っているように、と顔をしかめて見せて、再び談話室のドアへと耳をくっつけた。

 パーティーがあったあの夜から数日後、大事な話しがあるからとベロニカは両親に呼ばれたらしい。今、談話室には父と母、そして姉の3人がいる。

「ベロニカ、お前ももう16歳だ。そして私たち夫婦には息子がいない。分かるね?」
「もちろんです」
「物分りのいい娘を持って良かったよ。それでだね、バルドー家から正式に、三男のウィンストン君をどうかと話がきている。私ももちろん喜んでこの申し入れを受けようと思う。いいね?」
「…………」
「ベロニカ? どうしたの、押し黙って。お父様に早くお返事なさい」

 いつまでも黙っている姉に、母が急かすように声をかけている。

「…………もし、私が嫌だと言ったらその……お父様やお爺様はどうするのでしょうか……」
「嫌? 私はてっきりお前たちは好きあっているものだと思ったんだが? 熱心に手紙や花束を贈ってきてくれていたじゃないか」
「そうですが……」
「あなた、きっとベロニカは不安なのよ。生涯の伴侶を決める大事な事なんですもの。ね、ベロニカ?」
「はい……」
「そんなに暗い顔をすることはないぞ、ベロニカ。バルドー家の者と一緒になれば、もう少しいい暮らしが出来る。それにウィンストン君は男前ときた。幸せな結婚生活になるだろうよ。なあっ、オリビア」
「そうよ。みて、ベロニカ。こんな素敵なネックレスを私やあなたにって贈ってきてくれたわ。気の利く旦那様じゃないの」

 なーにが気の利く旦那様よっ! 外面がいいだけじゃない。
 数日前のことを思い出したら、ムカムカとしたものがこみ上がってきた。
 婚約前から愛人を作る気まんまんの男とお姉様が結婚だなんで、冗談じゃない!!
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