髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「ルシアナ……あなた、なんてことを……!!」
「だってそれが遠くない未来にやってくる事実ですわ! だからウィンストンとの婚約は……」
「黙りなさいっ、ルシアナ!」

 父の出した大声に、ルシアナのみならず母と姉も肩をビクンと震わせた。

「お父様……どうかこの婚約を考えなおしてくだ……」
「黙るようにと言ったんだ!」
「……」

 もう一度一喝されて、さすがのルシアナも口を噤んだ。
 父は疲れたように眉間に手をやり、重いため息をついた。

「私だって、ウィンストン・バルドーをこの家に招き入れるには抵抗があるさ。あの悪評が付きまとうバルドー家の者だ。お前の言っていたその近い未来にやってくる事実とやらも、本当に有り得る話しやもしれん」
「それならなぜ……」
「それでもこの結婚話を受け入れなければ……」
 
 父は言葉をと切らせると、窓際へと視線を向けた。

「あのカーテンは、一体いつからあの窓にかかっているのかな。私の記憶にある限りでは、私が生まれた時から一度もかけ替えられていない。随分と色あせてしまっているがね」

 ははっ……と力なく、父は笑った。
 どこの部屋のカーテンも、手入れはされているが古ぼけている。
 家具もそうだ。一体いつから使っているのか、あちこち傷んで軋む音がする。

 お金がない。

 領民から税を得ようにも、その領民が貧しいのだからどうしようもない。
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