髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革

 驚くルシアナに、祖父が再び「はっはっはっ」と笑ってルシアナに話しかけた。

「ドレッシングにりんご酢をかけるのはルミナリア地方特有の文化なんだよ。他では麦から作った穀物酢かぶどうから作るバルサミコ酢が一般的だな」
「そうなのですか。わたくしが知る世界ってまだまだ狭いのですね」

 前世の記憶が戻っても、領地から出たことの無いルシアナの知識はまだ浅い。
 ちょっぴり自信をなくして肩を落とすルシアナに、ケイリーが微笑みかけてきた。

「うん、それを言うなら僕もだよ。同じ国に住んでいるのに、地方に行くと随分と暮らしは違うものだと思い知らされることばかりさ」
「それならりんごをサラダに入れて召し上がられたことは? りんごの採れる時期になると、この生ハムサラダにりんごが入っているんですよ」
「なにそれ? 生ハムにはメロンでしょう?」
「あら、生ハムサラダに生のりんご、それからりんご酢のドレッシングって最高の組み合わせですわ」

 りんごはただ甘いだけのフルーツじゃない。あの爽やかな酸味とシャキシャキ感が、デザートとしてだけではなく料理にしてもよく合うのだ。

「そこまで言われると一度食べてみたいね。りんごが採れる季節に来ればよかったよ」
「ええ、りんごはルミナリアの誇りですから。ね、おじい様」
「ああ、そうさ。もうじき至る所からりんごの甘酸っぱい香りがして、いい季節になりますぞ」

 りんごしかない田舎だと言われようと、何だかんだで皆、りんごへの愛は半端ない。
 うんうんと頷くルシアナ達に、ケイリーはクスクスと笑っている。

「それでは今度、その自慢のりんご畑を見に行っても宜しいでしょうか? 折角ルミナリア地方にまでやって来たのに、特産物を拝まない訳にはいかないでしょう? 父上にも何をしてきたんだと叱られてしまいます」
「もちろん構いません。ルシアナ、今度案内して差し上げなさい」

 この流れからいくと当然ルシアナに振られるとは思ったけれど、ルシアナのケイリーへの印象は悪い。けれど断る口実も見つからず、ルシアナは仕方なく「分かりましたわ」と答えて承諾した。
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