髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「ええ。でもしっかり洗っても、洗った直後は良くても、暫くするとまた痒くなるのです」
「石鹸は優れた洗浄力がある反面で、皮膚が乾燥しやすくなるという欠点もあります。皮脂の多い方は問題ないですが、乾燥肌の人は皮脂が奪われ過ぎて痒くなることがあります」
「それでは私がしていたことは逆効果という事だったのですね……」
「かと言って、洗わな過ぎるのも痒みの原因になりますわ。こちらの石鹸は保湿力に優れたはちみつやハーブエキスを加えて作ってありますので、もし良ければ今日お持ち帰りになって使ってみて下さいませ」
「わぁ、ありがとうございます」
何だか実演販売の楽しさが分かってきちゃったわ!
気分がのってきて、緊張が徐々に楽しさに変わってきた。
すすぎ終えたダフネの髪の水気を軽く絞ると、タイミングを見計らったモニカが、汚れた水が入った桶から、綺麗な湯を張った桶に取り替えてくれた。
「さあ次は、皆様お待ちかねのヘアトリートメントの出番です! まずはトリートメントをこうして手のひらに出したら……髪の毛に直接塗布して馴染ませます」
「何ですって? 直接つけるの?!湯に混ぜるのではなく?」
うふふっ……。いい反応。
ずっと鼻先をつんとさせて実演を見ていたアルベリア伯爵夫人が、トリートメントを髪に直接つけた瞬間に声をあげた。
穀物酢でもレモン汁でも普通は湯に混ぜて、湯桶の中で髪をすすぐ。けれどルシアナ開発のトリートメントは、前世であったトリートメント同様、髪の毛に直接塗って使う仕様にした。
目新しさと、あとは腰を屈めて桶に髪を漬けるよりも楽だと思ってのことだ。
「そうです。髪に直接付けてください。しっかりと馴染ませたら、あとは洗い流せば終わりです」
何度か桶の湯を変えてすすぎ終え、布で丁寧に髪の毛を拭いていく。
よし、次はあの魔道具っと。