髪の毛の悩みなら公女様にお任せあれ!~ヘアスタイルから始まる領地改革
「もしかしてベロニカ様の髪の毛は、今日紹介された物を使ってケアしているのでしょうか?」
客人の視線が一斉にベロニカの方へと向けられた。
思いがけない注目に、ベロニカは頬を赤く染めながらこくんと頷き返している。
「そうです……。半年くらいルシアナに髪の手入れをしてもらっていて……」
「やっぱり!! こんな事を言うのは失礼かと思って黙っていたのですけれど、今日久しぶりにお会いして、ベロニカ様の髪の毛が随分落ち着いて綺麗になったなって思っていたんです!」
「私も! 同じことを感じていました。ツヤが出て、プラチナブロンドの髪色がより映えてますわ」
「そ、そうかしら。ありがとう」
頬を赤く染めていたベロニカの顔は、今度は熟れたりんご並みに真っ赤になった。嬉しさを隠しきれないようで、顔がいつになく綻んで照れている。
「わたし、そのヘアケア製品一式買います! ねぇお母様、いいでしょう?」
「仕方ないわねぇ」
「私も欲しいわ! お母様ぁ」
「この子ったらもう、すぐこうなるんだから。……なんて言って、私も欲しくなってしまったわ。うちにも一式くださいな」
うちも、うちも、と次々と声が上がる。
まさか皆、即決して買ってくれるとは思ってもみなかった。だって子供が作った製品なんて怪しすぎる。
ルシアナとしては今日は実演してサンプルを配って、家で試してから何件かに売れたらいいくらいに思っていたのに……。
あまりの反応の良さに、逆に戸惑ってしまうくらいだ。
「皆様、ありがとうございます。こちらのヘアオイルに使っているあんず油は、今年の収穫分から本格的に搾油して生産するつもりですので、とりあえず今ある分だけお配りしますわ。それから他の製品も出来るだけ沢山作れるように努力はしますがその……」
ルシアナは言葉を途切らせた。
実は作業所を新しく作ったのはいいものの、人件費や材料費を捻出するのにかなり苦労している。
材料は主にルミナリアの特産品を使ってはいるが、ベースとなる石鹸や容器となるビンボトルなどはルミナリアで今作っている量だけでは到底足りないので、他所から仕入れなければならないものも多い。
特にドライヤーを作るために必要な金属は、ルミナリアではほとんど採れないときた。
お金がないために、作りたくても作れない状態なのだ。
「お恥ずかしい話、資金があまり無いので安定した供給が出来るまでには時間がかかると思うんです。売り上げが増えれば設備投資したり、原材料の仕入れももっと出来るようになるかと思うので、それまで皆様にはご迷惑を……」
「いくら必要?」
「はい?」
ルシアナが厳しい資金繰りを説明している途中で、アルベリア伯爵夫人がハンドバッグから小切手を取り出した。