眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。

開かれた扉、閉ざされた心

6月の曇り空の下、都営団地の4階。
築年数の古さが外観に滲み出ている。

インターホンを押すと、しばらくしてドアがゆっくりと開いた。
半開きの隙間から覗く顔は、疲れ切ったような無表情。

「……はい」

「こんにちは、児童相談所の山口と佐原です。お約束の件で伺いました」

名刺を差し出し、花音が頭を下げると、山口も穏やかに続ける。

「お時間いただきありがとうございます。少しお話よろしいですか?」

香澄は無言のまま小さくうなずくと、しぶしぶといった様子でドアを開けた。
部屋の中はカーテンが半分だけ閉じられ、生活感と少しの乱雑さが混じり合っている。

悠真の姿は見えない。
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