眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
ソファに腰を下ろし、花音がメモをとる準備をしながら、山口が柔らかく切り出す。

「お元気でしたか? 前回お会いしたときより、少しお顔が明るくなったように見えます」

香澄は苦笑のような笑みを一瞬浮かべるが、すぐに視線をそらす。

「……まあ、前よりは。薬、少し減らしてみた」

「そうなんですね。夜は眠れていますか?」

「……眠れない日もあるけど、前よりマシ。悠真が寝るときに、隣でラジオつけてると落ち着く」

その言葉に、花音が小さく頷く。

「悠真くん、今は?」

「部屋。YouTube見てると思う。学校は……最近は、朝になると怖いって言うから……行かせてない」

「うん、それは聞いています。今日は、悠真くんにも少しだけ話を聞けたらと思って来ています」

花音が優しく言うと、香澄の眉がぴくりと動いた。

「……あの子に話させて、何か意味あるの? 結局“親が悪い”ってことになるんでしょ?」

言葉のトゲに、一瞬空気が張り詰める。
だが、山口がゆっくりと首を振る。

「香澄さん、私たちは“悪い人”を見つけに来てるわけではありません。
ただ、今の悠真くんが何を感じてるか、何に困っているかを知りたいだけです。
香澄さんの味方でもありたいと思って来ています」

沈黙。香澄の肩が少しだけ下がる。

「……だったら、どうぞ。多分、あの子、口数少ないけど」
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