眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
「……おはようございます」
早瀬が署の玄関をくぐると、すでに朝の空気はピリリと張っていた。
休日明けの月曜、7時58分。
ちょうど当番の交番員が詰所に戻る時間帯で、署内はゆるやかに動き始めていた。
「おー早瀬、お前来るの早いな。休み明けだぞ?」
振り向いたのは、新田誠吾係長。
いつものようにジャケットのポケットに片手を突っ込み、紙コップのコーヒーを手にしている。
「おはようございます。畑耕して筋肉痛で早く目が覚めてしまったもので」
「……お前んち、農家か?」
「家庭菜園の拡張です。父の命令で、勝手に開墾されました」
「相変わらず平和な家だな」
新田は吹き出しながら、背中を軽く叩いた。
そこへやってきたのは、後輩の岡田翔真(おかだ しょうま)。
今年で3年目になる、やや線の細いが真面目な若手警察官だ。
「早瀬さん、聞きましたよ。またミルクちゃんにおやつあげすぎたって?」
「……新田さん、誰に喋ったんですか」
「言ってないぞ? お前んちの猫の話なんて、岡田は自主的に調査済みだろ?」
「なんで僕がプライベート監視されてるんですか」
「いやーでも癒しですよね、猫。僕も最近保護猫カフェ通い始めて……」
「お前、そこに通って何か出会いとか狙ってんだろ?」
「ば、バレました?」
早瀬は溜息混じりに笑い、新田はコーヒーを飲みながら肩をすくめた。
「いいじゃん。出会いは猫から始まる時代だろ。なあ早瀬、お前も……」
「俺はミルク一筋です」
きっぱり言い切ると、岡田が「それはそれで心配です」と小声でつぶやいた。
新田は苦笑いしながら、机の上に朝の報告書の束をどさりと置いた。
「はいはい、現実に戻って仕事な。今日は川野の件、児相のほうから何かあるかもしれん。引き続き見張りも意識しとけよ」
「了解です」
早瀬は席につき、報告用端末を起動する。
休日の記憶はミルクのモフモフとともに遠ざかり、目の前にはまた、現実が広がっていた。
早瀬が署の玄関をくぐると、すでに朝の空気はピリリと張っていた。
休日明けの月曜、7時58分。
ちょうど当番の交番員が詰所に戻る時間帯で、署内はゆるやかに動き始めていた。
「おー早瀬、お前来るの早いな。休み明けだぞ?」
振り向いたのは、新田誠吾係長。
いつものようにジャケットのポケットに片手を突っ込み、紙コップのコーヒーを手にしている。
「おはようございます。畑耕して筋肉痛で早く目が覚めてしまったもので」
「……お前んち、農家か?」
「家庭菜園の拡張です。父の命令で、勝手に開墾されました」
「相変わらず平和な家だな」
新田は吹き出しながら、背中を軽く叩いた。
そこへやってきたのは、後輩の岡田翔真(おかだ しょうま)。
今年で3年目になる、やや線の細いが真面目な若手警察官だ。
「早瀬さん、聞きましたよ。またミルクちゃんにおやつあげすぎたって?」
「……新田さん、誰に喋ったんですか」
「言ってないぞ? お前んちの猫の話なんて、岡田は自主的に調査済みだろ?」
「なんで僕がプライベート監視されてるんですか」
「いやーでも癒しですよね、猫。僕も最近保護猫カフェ通い始めて……」
「お前、そこに通って何か出会いとか狙ってんだろ?」
「ば、バレました?」
早瀬は溜息混じりに笑い、新田はコーヒーを飲みながら肩をすくめた。
「いいじゃん。出会いは猫から始まる時代だろ。なあ早瀬、お前も……」
「俺はミルク一筋です」
きっぱり言い切ると、岡田が「それはそれで心配です」と小声でつぶやいた。
新田は苦笑いしながら、机の上に朝の報告書の束をどさりと置いた。
「はいはい、現実に戻って仕事な。今日は川野の件、児相のほうから何かあるかもしれん。引き続き見張りも意識しとけよ」
「了解です」
早瀬は席につき、報告用端末を起動する。
休日の記憶はミルクのモフモフとともに遠ざかり、目の前にはまた、現実が広がっていた。