眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
午後五時ちょうど、花音は川野家のインターホンを押した。
一拍、二拍……扉の向こうから軽やかな足音が近づいてくる。
「はーい」
扉がすっと開かれた。
川野美咲は、以前よりも明るい顔つきをしていた。
髪は無造作にまとめられ、すっぴんのままだが、どこか余裕がある。
「こんにちは」
花音が声をかけると、
「こんにちは」と、挨拶が返ってきた。
扉の隙間から、薄暗い玄関先と、奥にあるリビングの様子が少しだけ見えた。
埃っぽさや生活臭はあるが、前回ほどの散らかりは感じない。
「結咲ちゃん、お加減いかがですか?」
「うん、今日はよく遊んでたよ。さっきまで起きてたけど、少しご飯食べて、寝ちゃったの」
声のトーンは柔らかく、警戒感は以前ほど見えない。
「面会してもよろしいですか?」
「いいよ。寝てるけどね」
美咲が通してくれ、花音は玄関で靴を脱ぎ、リビングへ向かった。
部屋の奥の布団の上に、結咲ちゃんが小さな身体を丸めるようにして眠っていた。
頬はうっすらと赤みを帯び、呼吸は安定している。
胸のあたりには、ピンクと水色のユニコーンのぬいぐるみが抱えられていた。
寝息の間に、指先がぬいぐるみの角をぎゅっと握るように動く。
――よかった。ちゃんと眠れている。
花音は静かに視線を外し、そっと声をかけた。
「夜泣きがひどい場合は、保健師さんにもご相談してみますか? 睡眠のリズムや、お母さんの疲れにも配慮できます」
美咲は少し考えるような顔をしたが、やがてうなずいた。
「うん、よくなるなら……相談したいの」
花音は微笑みを浮かべながら、手帳を開いてメモを取った。
一歩前進――だが、油断はできない。
前触れなく空気は変わる。
この“穏やかさ”も、嵐の前触れかもしれない。
とりあえず今は、目の前のこの穏やかさを記録しておく。
それが、次に来る“もしも”への布石になるかもしれないから。
一拍、二拍……扉の向こうから軽やかな足音が近づいてくる。
「はーい」
扉がすっと開かれた。
川野美咲は、以前よりも明るい顔つきをしていた。
髪は無造作にまとめられ、すっぴんのままだが、どこか余裕がある。
「こんにちは」
花音が声をかけると、
「こんにちは」と、挨拶が返ってきた。
扉の隙間から、薄暗い玄関先と、奥にあるリビングの様子が少しだけ見えた。
埃っぽさや生活臭はあるが、前回ほどの散らかりは感じない。
「結咲ちゃん、お加減いかがですか?」
「うん、今日はよく遊んでたよ。さっきまで起きてたけど、少しご飯食べて、寝ちゃったの」
声のトーンは柔らかく、警戒感は以前ほど見えない。
「面会してもよろしいですか?」
「いいよ。寝てるけどね」
美咲が通してくれ、花音は玄関で靴を脱ぎ、リビングへ向かった。
部屋の奥の布団の上に、結咲ちゃんが小さな身体を丸めるようにして眠っていた。
頬はうっすらと赤みを帯び、呼吸は安定している。
胸のあたりには、ピンクと水色のユニコーンのぬいぐるみが抱えられていた。
寝息の間に、指先がぬいぐるみの角をぎゅっと握るように動く。
――よかった。ちゃんと眠れている。
花音は静かに視線を外し、そっと声をかけた。
「夜泣きがひどい場合は、保健師さんにもご相談してみますか? 睡眠のリズムや、お母さんの疲れにも配慮できます」
美咲は少し考えるような顔をしたが、やがてうなずいた。
「うん、よくなるなら……相談したいの」
花音は微笑みを浮かべながら、手帳を開いてメモを取った。
一歩前進――だが、油断はできない。
前触れなく空気は変わる。
この“穏やかさ”も、嵐の前触れかもしれない。
とりあえず今は、目の前のこの穏やかさを記録しておく。
それが、次に来る“もしも”への布石になるかもしれないから。