眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
新田が部屋に入ってきて、軽く声をかけた。
「そろそろ撤収ですよ。僕、鍵任されてるんで。」
その声色から、母親の保護も無事に済んだことが伝わってくる。

ソファにもたれ、変な重心で立つ花音の姿に新田は眉間に皺を寄せた。
だが、それ以上に怪訝そうに花音を見つめているのは早瀬の方だった。

「どうしたんですか?佐原さん。同行しないんですか?」
早瀬が静かに口を開く。

花音は自虐的に笑みを浮かべて答えた。
「介入した時に突き飛ばされた拍子に足を捻ってしまって……私、鈍臭くてすみません。」

新田は花音の足をチラリと見やり、優しく言った。
「無理しないでくださいね。取りあえず出ましょうか?」

二人が花音に背を向け、部屋を出ようとする。

しかし、花音は内心で焦りを募らせていた。
「歩けない、歩けない、どうしよう……」

気配が止まったことに気づいたのか、二人は振り返る。

「佐原さん?」

「え、あの……ちょっと歩ける状態じゃないというか、なんというか……」

自分のことでしどろもどろになってしまう自分に、花音は思わず苦笑した。
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