眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
花音は、診察の結果を聞いて、心の底から安堵した。
骨折もヒビもない――診断は「足関節の強い捻挫」。内出血も見られたが、手術などは必要なく、あとは安静と時間が治してくれる。
病院で処方された鎮痛剤をその場で打ってもらい、少しずつ痛みが和らいでいくのを感じながら、花音はやや遅い時間の児相へと戻った。
薄暗い廊下を歩いていると、当直室から朝岡が顔を出す。
「おかえりなさい。大丈夫だった?」
「はい……ご心配をおかけしました。」
花音は軽く頭を下げ、少し足を引きずるようにして朝岡のデスクへと歩み寄る。
「結咲ちゃんは三宅さんと一緒に一時保護所に向かいました。移送中も泣いてたけど、三宅さんがずっと抱っこしてくれてました。」
朝岡の言葉に、小さくうなずきながら、花音も自分の報告に入る。
「先ほど病院で、骨折やヒビはなしとのことでした。ただ、念のためしばらく安静が必要で……あと、公用車なんですが……」
「ああ、それね。警察署にあるって新田さんから電話ありましたよ。」
「すみません……私が動けなかったので……」
「いいの。あの状況であそこまで対応してくれて、本当にありがとう。結咲ちゃん、あなたがいたから守れた。」
その言葉に、花音はわずかに目を伏せた。
「……もっと早く気づけていたら、1人で現場に行かなければすんだのにと思うと……自分の詰めの甘さに悔しさが残ります。」
「その悔しさを、次に活かせばいいの。完璧な対応なんて、誰にもできない。今日のことは全員で共有するから、あなたが1人で抱えることじゃない。」
朝岡の言葉は、決して慰めではなかった。
職務として、信念として、花音がやったことは確かに正しく――それでも、誰かの手を借りていいのだという許しのような響きがあった。
花音は深く息を吸い、静かに吐いた。
「……ありがとうございます。では、記録作成に入ります。」
夜の児童相談所に、キーボードを打つ音が静かに響き始めた。
足は痛む。けれど、彼女の意志は、少しも揺らいでいなかった。
骨折もヒビもない――診断は「足関節の強い捻挫」。内出血も見られたが、手術などは必要なく、あとは安静と時間が治してくれる。
病院で処方された鎮痛剤をその場で打ってもらい、少しずつ痛みが和らいでいくのを感じながら、花音はやや遅い時間の児相へと戻った。
薄暗い廊下を歩いていると、当直室から朝岡が顔を出す。
「おかえりなさい。大丈夫だった?」
「はい……ご心配をおかけしました。」
花音は軽く頭を下げ、少し足を引きずるようにして朝岡のデスクへと歩み寄る。
「結咲ちゃんは三宅さんと一緒に一時保護所に向かいました。移送中も泣いてたけど、三宅さんがずっと抱っこしてくれてました。」
朝岡の言葉に、小さくうなずきながら、花音も自分の報告に入る。
「先ほど病院で、骨折やヒビはなしとのことでした。ただ、念のためしばらく安静が必要で……あと、公用車なんですが……」
「ああ、それね。警察署にあるって新田さんから電話ありましたよ。」
「すみません……私が動けなかったので……」
「いいの。あの状況であそこまで対応してくれて、本当にありがとう。結咲ちゃん、あなたがいたから守れた。」
その言葉に、花音はわずかに目を伏せた。
「……もっと早く気づけていたら、1人で現場に行かなければすんだのにと思うと……自分の詰めの甘さに悔しさが残ります。」
「その悔しさを、次に活かせばいいの。完璧な対応なんて、誰にもできない。今日のことは全員で共有するから、あなたが1人で抱えることじゃない。」
朝岡の言葉は、決して慰めではなかった。
職務として、信念として、花音がやったことは確かに正しく――それでも、誰かの手を借りていいのだという許しのような響きがあった。
花音は深く息を吸い、静かに吐いた。
「……ありがとうございます。では、記録作成に入ります。」
夜の児童相談所に、キーボードを打つ音が静かに響き始めた。
足は痛む。けれど、彼女の意志は、少しも揺らいでいなかった。