眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
静かな会議室に、ホワイトボードのペンがカチリと音を立てる。
定例会議は後半に差しかかり、空気がわずかに重たくなる。
「次は、川野結咲ちゃんの件です」
担当職員が資料を配りながら言うと、室内の数名が顔を上げた。
佐原は手元の紙を見つめたまま、表情を動かさない。
「過去の対応経過は資料にある通りです。
ここにきてリスクの段階がひとつ上がりました。
交際相手の早苗雄貴(さなえゆうき)の存在が確認され、前回の家庭訪問時に佐原が突き飛ばされる事態となりました」
室内にざわつきが走る。
「母親はその後、任意で病院に一日入院しましたが、状態は落ち着いており現在は帰宅済みです。
結咲ちゃんは、明後日に一時保護解除・引き渡し予定。
なお、早苗に対しては警察から厳重注意が行われ、今後の接触は控えるよう『お願いベース』での対応が取られています。
接近禁止命令などの強制力のある措置は現時点では出されていません」
空気が張り詰める。
一時保護の解除に疑問を感じている職員の視線が交錯する。
だが、手続き上の判断と家庭の回復支援計画はすでに進行しており、決定に至っている。
そして最後に、朝岡がゆっくりと口を開いた。
「……今回、佐原さんが対応中に負傷しました。
命に関わるものではなかったのが不幸中の幸いです。
でも、もう一歩踏み込んでいたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれません」
佐原が目を伏せると、数名がちらりと彼女を見た。
「皆さん、繰り返します。
危険を感じたら、すぐに警察に通報。
一人で対処しようとせず、自分の身の安全を最優先すること。……いいね?」
静かなうなずきが部屋を満たす。
普段、穏やかな口調の朝岡の声音に、ごまかしのない厳しさがにじんでいた。
佐原は、誰とも目を合わせず、そっと背筋を伸ばした。
定例会議は後半に差しかかり、空気がわずかに重たくなる。
「次は、川野結咲ちゃんの件です」
担当職員が資料を配りながら言うと、室内の数名が顔を上げた。
佐原は手元の紙を見つめたまま、表情を動かさない。
「過去の対応経過は資料にある通りです。
ここにきてリスクの段階がひとつ上がりました。
交際相手の早苗雄貴(さなえゆうき)の存在が確認され、前回の家庭訪問時に佐原が突き飛ばされる事態となりました」
室内にざわつきが走る。
「母親はその後、任意で病院に一日入院しましたが、状態は落ち着いており現在は帰宅済みです。
結咲ちゃんは、明後日に一時保護解除・引き渡し予定。
なお、早苗に対しては警察から厳重注意が行われ、今後の接触は控えるよう『お願いベース』での対応が取られています。
接近禁止命令などの強制力のある措置は現時点では出されていません」
空気が張り詰める。
一時保護の解除に疑問を感じている職員の視線が交錯する。
だが、手続き上の判断と家庭の回復支援計画はすでに進行しており、決定に至っている。
そして最後に、朝岡がゆっくりと口を開いた。
「……今回、佐原さんが対応中に負傷しました。
命に関わるものではなかったのが不幸中の幸いです。
でも、もう一歩踏み込んでいたら、取り返しのつかないことになっていたかもしれません」
佐原が目を伏せると、数名がちらりと彼女を見た。
「皆さん、繰り返します。
危険を感じたら、すぐに警察に通報。
一人で対処しようとせず、自分の身の安全を最優先すること。……いいね?」
静かなうなずきが部屋を満たす。
普段、穏やかな口調の朝岡の声音に、ごまかしのない厳しさがにじんでいた。
佐原は、誰とも目を合わせず、そっと背筋を伸ばした。