眠れぬ夜は、優しすぎる刑事の腕の中で。
薄暗い仮眠室で、花音は寝たり起きたりを繰り返していた。
枕元に置いた当直用スマホが突然、けたたましく震える。

慌てて目を開けると、画面には「生活安全課 新田」からの着信が表示されている。
胸がざわつく。嫌な予感が脳裏をよぎった。

「何かあったのか……」
震える指で電話に出る。

「佐原さん、急ぎで現場に向かってほしい。川野家で子どもの泣き声の通報があった。扉は施錠、応答なし。今、警察が臨場中だ」

花音は声が詰まった。
「……電話に出なかったのは、なにかあったから?」

「詳細はまだ分からない。すぐ向かってくれ」
新田の声が切迫している。

花音は深く息を吸い、顔を上げる。
「わかりました、すぐに準備します」

寝ぼけ眼が一気に覚め、胸の奥が締めつけられるようだった。
(あの子に、何か起きているかもしれない……)
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