リアライズの殺人〜私は不仲のアイドルグループメンバーです。〜
これまでは芸能界の中で、仕事で出会った相手とは同性のみとしか親しい付き合いをしてこなかった自分。
それはアイドルっていう立場上、安全な道だと思っていたけれど、もしかしてもったいない青春を送ってきたのかもしれない───。
それはそうと、今、ひとつだけ気になっている事がある。
私の目の前に座っている彼。
彼は透君、といってもちろんルミノサイトのメンバーの一人なのだけれど、この透君はかなり口数が少ない。
口数が少ないなら、なるべくこちらが気を使って積極的に話しかけなきゃ、とかそういう話ではなくて、どことなく様子がおかしい、と感じる。
この冬の最中(さなか)、個室の中は暖房が効いているとはいえ、かなりの暑がりなのか、頻(しき)りに汗をかいてそれを拭っている。
また、この会が始まってからまだ小一時間程度しか時間が経っていないにも関わらず、大ジョッキの氷水を3回もオーダーしてそればかり飲んでいる。