リアライズの殺人〜私は不仲のアイドルグループメンバーです。〜




事務所の喫煙ルームにもなっている休憩所でトイレに行っている胡兎を待ちながら、そういえばここを利用するのはほぼ高瀬社長しか居ないよなぁ、とぼんやり思い出していた。



元々事務所のスタッフでタバコを吸うのは社長だけだった気がする。








「お待たせ。久々にあの寮に帰るのか〜…もう二年ぶりくらい?…朱理はもっとだよね?」




胡兎がやって来た。



寮に行く、ではなく“帰る”と表現した胡兎の言葉にどういうわけか、妙に心がくすぐったくなる。




昔はグループのメンバーと一緒に事務所から寮に帰る事が本当によくあった。




その事を忘れていた事実がその当時からもう随分と時間が経っていた事を私自身に思い知らせる。





「そうだね。でも私は時々雫に会いに寮に行ってたから。久し振りってほどじゃないよ。」




寮に雫ひとりを置いてけぼりにしてしまっている気がしてなんだか言い訳みたいな返答をしてしまう。


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