諦めの悪い外交官パパは逃げ出しママへの愛が強すぎる
■プロローグ 運命のマイヒーロー
「君は今もひとりで――否、その子と二人で?」
彼が驚いたようにこちらを見る。
だが、ある予感を込めた眼差しがそこには同居していた。
「その子はひょっとして」
その問いに答えられず、私は知らないふりをして踵を返そうとした。
彼に知られるわけにはいかない。とっさの行動だった。
「待って」
強い力に肩を抱かれ、視線が交わり合う。
一瞬にして昔に戻ってしまいそうな、懐かしさが胸の内側に去来する。
零れてしまいそうになる真実を必死に抑え込みながら、私は改めて自分を戒める。
彼に知られてはいけない。もう一度、強く胸に刻み込む。
だって私たちの縁はあのときに切れてしまったのだから。
「放してください。私とあなたは、もう何も関係がありませんから」
「俺の目を見ても言える?」
たとえ愛しさが溢れようとも……。
あのとき私たちは出会う運命だった。
と同時に別れる運命でもあったのだから。
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