羞恥心


近所の薬局の前にゾウの人形がある

オレンジ色したかわいいゾウの人形

大きくて幼稚園児くらいのサイズがまたかわいさを誇張している

たしか…製薬会社のキャラクターだったはずの大きなゾウの人形

その薬局はおばあちゃんが一人で切り盛りしていた

薬以外にもいろんなものが置いてあって 駄菓子なんかもおいてあった
いつも夕方には学校帰りの子どもたちでにぎわっていた 
その光景は まるで子ども達の小さな社交場のようだった

わたしは学校に通うその道で毎日ゾウの人形を目にしていた

ある冬の寒い日にゾウに毛糸の帽子がかぶせられていた
おそらくおばあちゃんの手編みだ
冬の寒さにゾウがかわいそうと思ったおばあちゃんの手編みだろう…
その優しさを想像するとちょっとホッコリした気持ちになった

それからしばらくして手袋がつけられていた
移りゆく季節を薬局の前の人形に教えられている気がした

雪が降り始めていよいよ冬も本番!ってなってきた日
朝いつものように目に入ってきたゾウの人形には服が着せられていた!

雪の降る日をおばあちゃんは待ちわびていたかのようにゾウにぴったりのサイズ感の服が着せられていた
一見、幼い子どもに見えたゾウの格好に思わず笑みがこぼれる

学校帰り、いつものように子どもたちでにぎわう薬局の中に違和感を感じて足が止まる
わたしはその違和感の正体を目を凝らして探す…

      ーーー !? ーーー

子どもたちの中に混じって立っていたゾウの人形は無残にもズボンを下げられていた

元々の姿はなにも着ていないのにズボンを下げられたその姿にわたしは羞恥心を感じずにはいられなかった


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