報復を最愛の君と
天竜
それから国内に入れてもらえた私達は、相変わらず警戒しながらセランの後に続いた。
だって、こんなにも堂々と正門から入るなんて予想してなかったし。
そのせいであちこちから視線が…。
とその時、ひとりの男の子が声をかけてきた。
オレンジ色の髪で肌も焼けてる感じ。
ネコみたいなしっぽが生えてるから、すぐに能力者だって分かる。
「銀狼様、その人達は新しい奴隷っすか〜?それとも天竜様の食いもん?」
さらっと恐ろしいことを言うものだから、ゾッとしちゃう。
でも、セランは顔色ひとつ変えずに彼に言った。
「首輪の子は奴隷だよ」
あくまでクラ以外を危険にさらす気はないみたい。
でも、男の子からしたらその説明じゃ足りないみたい。
「女の方は?男ふたりは?」
少しむすっとした様子で聞いてくる。
セランはチラッと私を見た後、答えた。
「この女の子は人魚だよ。男ふたりは騎士。人魚の護衛をしてくれてるんだ」
その言葉にぽかんとした男の子。
周りのざわざわも消えていた。
みんな私達をもの珍しそうに見てくる。
それから、誰かが声をあげた。
「人魚様が300年ぶりにお帰りになった!!」
「人魚様ー!!」
「おかえりなさいませ!」
その言葉に乗っかるようにして、みんなが声をあげる。
どうやら歓迎してくれているみたい?
「それじゃ、僕達は行くから。ああ、今日の夜は宴にしようか。人魚が帰ってめでたいことだし、ね」
その言葉に歓声があがった。
それから逃げるようにして、セランは道を急足で進んでいく。
面倒なので、私達も同じようにして続いた。
なんとか国民がたくさんいる道を抜けて、お城の前に来た。
私が住んでいた城とは違う、木材で作られたレトロな建物。
「来て」
セランが扉を開けてそう言うので、私達は城内に入った。
緊張と軽快が解けて、なんだか軽くなった気分。
みんな同じだったようで、ほっと一息ついていた。
「天竜は最上階にいるから。階段登れそう?」
私達に気をつかってなのか、そう聞いてくれた。
私達はコクコクとうなずいた。
「じゃあ行こっか」
そう言って廊下奥まで進み、突き当たりの階段を登っていった。
6階分くらい登ったところで、階段はなくなった。
どうやらここが最上階みたい。
この階の部屋は目の前の一室だけ。
セランが扉をノックした。
「セレ、人魚を連れてきたよ」
その言葉に返事はなかったけれど、セランは気にせず扉を開いた。
扉は豪華だったのにも関わらず、内装はなんだか落ち着いていた。
奥のバルコニーに長い黒髪の女の子が。
そして、女の子はゆっくりと振り返った。
時が止まった気がした。
おでこから生えた立派なツノ、ネコのような瞳はエメラルドグリーンに輝いている。
八重歯は尖っていて肌は白く、顔立ちは少し中性的な印象もある。
「ようこそベルス国へ。歓迎するよ人魚。それと、君達もね」
にこっと笑った表情は見惚れそうだけど、どこか偽りで怖い。
そして、彼女は私に近づいて手をとった。
「人魚が戻ってきてくれて嬉しいよ!これからはボク達とずっと一緒だね」
なぜか身の危険を感じた私は、後ずさった。
けれど、それは全く気にしない様子で話を続ける。
「ああ、自己紹介がまだだったね!ボクは今年で310歳の天竜、セレストだよ。ちなみに、こんな見た目だけど男なんだ」
「えっ?!男?!」
まさかの事実に驚いた。
だって、どこからどうみても女の子。
「君は?」
「え、えっと…。ヒメアです」
「へ〜!かわいい名前だね!」
もう一度笑ったセレストの表情からは、先ほどのような変な感じはしなかった。
セレストを見ていると、闇の中に落とされたような錯覚をする。
嫌だな、この感じ。
不安が脳裏にこびりついた。
だって、こんなにも堂々と正門から入るなんて予想してなかったし。
そのせいであちこちから視線が…。
とその時、ひとりの男の子が声をかけてきた。
オレンジ色の髪で肌も焼けてる感じ。
ネコみたいなしっぽが生えてるから、すぐに能力者だって分かる。
「銀狼様、その人達は新しい奴隷っすか〜?それとも天竜様の食いもん?」
さらっと恐ろしいことを言うものだから、ゾッとしちゃう。
でも、セランは顔色ひとつ変えずに彼に言った。
「首輪の子は奴隷だよ」
あくまでクラ以外を危険にさらす気はないみたい。
でも、男の子からしたらその説明じゃ足りないみたい。
「女の方は?男ふたりは?」
少しむすっとした様子で聞いてくる。
セランはチラッと私を見た後、答えた。
「この女の子は人魚だよ。男ふたりは騎士。人魚の護衛をしてくれてるんだ」
その言葉にぽかんとした男の子。
周りのざわざわも消えていた。
みんな私達をもの珍しそうに見てくる。
それから、誰かが声をあげた。
「人魚様が300年ぶりにお帰りになった!!」
「人魚様ー!!」
「おかえりなさいませ!」
その言葉に乗っかるようにして、みんなが声をあげる。
どうやら歓迎してくれているみたい?
「それじゃ、僕達は行くから。ああ、今日の夜は宴にしようか。人魚が帰ってめでたいことだし、ね」
その言葉に歓声があがった。
それから逃げるようにして、セランは道を急足で進んでいく。
面倒なので、私達も同じようにして続いた。
なんとか国民がたくさんいる道を抜けて、お城の前に来た。
私が住んでいた城とは違う、木材で作られたレトロな建物。
「来て」
セランが扉を開けてそう言うので、私達は城内に入った。
緊張と軽快が解けて、なんだか軽くなった気分。
みんな同じだったようで、ほっと一息ついていた。
「天竜は最上階にいるから。階段登れそう?」
私達に気をつかってなのか、そう聞いてくれた。
私達はコクコクとうなずいた。
「じゃあ行こっか」
そう言って廊下奥まで進み、突き当たりの階段を登っていった。
6階分くらい登ったところで、階段はなくなった。
どうやらここが最上階みたい。
この階の部屋は目の前の一室だけ。
セランが扉をノックした。
「セレ、人魚を連れてきたよ」
その言葉に返事はなかったけれど、セランは気にせず扉を開いた。
扉は豪華だったのにも関わらず、内装はなんだか落ち着いていた。
奥のバルコニーに長い黒髪の女の子が。
そして、女の子はゆっくりと振り返った。
時が止まった気がした。
おでこから生えた立派なツノ、ネコのような瞳はエメラルドグリーンに輝いている。
八重歯は尖っていて肌は白く、顔立ちは少し中性的な印象もある。
「ようこそベルス国へ。歓迎するよ人魚。それと、君達もね」
にこっと笑った表情は見惚れそうだけど、どこか偽りで怖い。
そして、彼女は私に近づいて手をとった。
「人魚が戻ってきてくれて嬉しいよ!これからはボク達とずっと一緒だね」
なぜか身の危険を感じた私は、後ずさった。
けれど、それは全く気にしない様子で話を続ける。
「ああ、自己紹介がまだだったね!ボクは今年で310歳の天竜、セレストだよ。ちなみに、こんな見た目だけど男なんだ」
「えっ?!男?!」
まさかの事実に驚いた。
だって、どこからどうみても女の子。
「君は?」
「え、えっと…。ヒメアです」
「へ〜!かわいい名前だね!」
もう一度笑ったセレストの表情からは、先ほどのような変な感じはしなかった。
セレストを見ていると、闇の中に落とされたような錯覚をする。
嫌だな、この感じ。
不安が脳裏にこびりついた。