報復を最愛の君と

ソラの能力

古屋の中に入ると、そこには想像よりもきれいなリビングがあった。
カナタがきれい好きなのは知っているし、まあそこまで驚かない。
ただ古屋の建てつけが悪いってだけだろう。
「さあ入って。一階は狭いけどさ、地下があってそっちは案外広いよー。寝る時はそっち使いな」
カナタひとりで生活をしているわけだし、中は5人も入るとちょっと多い気がする。
自室が広かったし、余計にそう感じてしまうのかも。
「んじゃ、ご飯でも作るわ〜」
「あっ、私も手伝うよ。迷惑かけてるし…!」
私はそう言ってカナタに近寄った。
カナタは驚いたように目を見開いた後、ふわりと笑った。
「姫様の手料理が食べられるなんて、嬉しい限りだな」
その笑顔が、私の知っている頃のカナタと重なった。
やっぱり、カナタを敵だと思いきれないよ。
私はカナタと敵対したくなんかないのに。
そんな考えを誤魔化して、私はぎこちない笑顔を浮かべたんだ。
「じゃあ、早速材料見せて!」
私たちはまた城にいた時のように一緒にご飯を作った。
あの時はお菓子を作って、こっそり食べたりしたっけ。
懐かしいなぁ。
夕食の時も敵同士だということを忘れて、私たちは賑やかにテーブルを囲んだ。
こんな日々が戻ってくればいいのに。
普通でいられることを誰よりも望んでいた。
人間になれたら、姫じゃなかったら、平民に生まれられたなら。
そんな“もしも”訪れないのに。
ーーーーー
パッと目が覚めた。
地下室で窓がないから、夜なのかもわからない。
でも、感覚がまだ夜だと告げている。
やっぱり慣れない場所ではなかなか眠れないのかもしれない。
仕方ない、少し風に当たってこよう。
そう思い、私は上の階へと上がっていった。
目をこすりながら上がっていくと、声が聞こえてハッとする。
そのままゆっくりと上がっていってドアの前で息を殺した。
少しだけ開いていて、その隙間からリビングにいる人物を見た。
私はホッとした。
そこにいたのは、カナタとソラだった。
アヤカやユウセイが来たのかと思い、少し焦ってしまった。
私はドアを開こうとしたが、カナタの言葉で手が止まってしまった。
「お前、無理しすぎな。能力使いすぎなんだよ。寿命残り何年?」
え…?
いったい、なんの話しをしているの?
ソラは人間のはずだ。
能力なんて持っていないはずなのに、能力の使いすぎ?寿命?
「うるさい。俺は絶対に過去を変えてみせる。ヒメアが笑って暮らせるように、俺がやらなきゃいけないんだ」
ソラはカナタを睨んだ。
その目は鋭く、恐ろしいほどに冷たかった。
私は階段を駆け降りた。
聞くべきじゃなかった。
ソラは私のために能力を使って、寿命を削っているということ?
考えてもわからない。
そんな能力者は聞いたことがない。
それに、カナタはソラの能力のことを知っているの?
だとしてもカナタが答えてくれるとは思わないし、ソラは聞いてもきっとはぐらかされる。
私は布団にくるまった。
どうか、どうか聞き間違いでありますように。
「ん…ヒメア様…」
クラの寝言と、ルナの吐息でホッとする。
肝心(かんじん)なことは話してくれないソラ。
まるで、私の助けは必要ないみたいに言われたような気分。
私はソラのことが——。
そのまま、眠りに落ちていった。
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