報復を最愛の君と

カナタからの助言

「荷物しっかり持ってくださいね。ルナさん、最終チェックを…」
スイの声にハッとする。
もう日はずいぶんとのぼり、出発の時間になっている。
「ヒメア?もう行くけど、大丈夫か?」
顔をあげれば、そこにはソラがいた。
私の心配をするくらいなら、自分の心配をしてほしい。
悩んでるのだって、ソラのせいだから。
でも、私にはそこまで踏み込む勇気がない。
私はグッと言葉を飲み込んで、いつものように笑った。
「うん、大丈夫。長旅で疲れがたまっちゃだけだと思うから」
「そっか…」
ソラは納得していないようだったけど、それ以上はなにも言ってこなかった。
そして、出発の時間。
カナタはまだ残ると言っていた。
まあ、ユウセイやアヤカに一緒にいるところを見られるのは問題だ。
だから、ついてこなくていい。
私は、最後にお礼は言わなきゃとカナタに近寄った。
「ありがとうカナタ」
私がそう言うと、カナタは驚いたように目を見開いた。
「俺は敵なんだろ?礼なんていらねぇよ」
その言葉に、少し間を置いて言った。
「うん。敵だよ。申し訳ないけど、私から全てを奪ったから許せない。今は城にいた使用人と同じくらい、カナタも憎いよ」
私はカナタを強く睨んだ。
その視線に、カナタの表情はひきつる。
「怖いなぁ。まあ、俺があの2人と協力してる時点でそう言われるのはわかってたよ。姫様がそう言うんだったら、俺だって容赦しないからな」
「そう。でも、私は復讐を必ず遂げるから」
その言葉に、カナタは無言になった。
それから、さっきとは違う真剣な顔つきで言った。
後ろにいる3人には聞こえないように小声で。
「その選択は、大切な人を傷つけることもある。俺も、守りたかったものを守れなかったからな」
「…どういう意味?」
「そのままの意味。昨日、見てたんだろ?俺とソラの会話を」
ドクンッと心臓が跳ねた。
バレていたんだ。
「なら、わかるだろ?ソラはヒメアを守るために、自分を犠牲にした。俺もそうだ。でも、それはヒメアにとっていい選択肢だったのか?」
私は首を横に振った。
私はそんなこと望んでないもの。
「俺だって、ヒメアを守るためだったんだ」
私は反射的に顔をあげた。
カナタは、とても悲しそうな表情をしている。
「イコロ国は人間主義で、能力者を許さないだろ?でも、能力者しか生まれなければそんなのなくなる。みんな平等だ。だから、俺は人間を能力者に変える実験をしてる」
「っ…!だからって、人を傷つけていい理由にならない!!私の両親を殺したのは、カナタたちでしょ!?能力者のために能力者を犠牲にするなんておかしい!」
私は声を荒げて言った。
たしかに、彼方の言うことはわかる。
でも、命を軽んじる理由には値しない。
そのせいで、私の両親は死んだのだから。
「…もう、手遅れだったんだ」
絞り出したような、すごく小さな声。
「か、カナタ…?」
初めて見る弱気の姿に、少し動揺してしまった。
そんな私の様子を見て、カナタはハッとしたように言った。
「いや…なんでもない。とにかく、俺から言えるのは犠牲者を出すなってことだ。恨むのは俺らだけにしとけ。その犠牲には、自分も含めて考えろ」
そう言って、カナタは怒ったようにドアを閉めてしまった。
言いすぎたのかもしれない。
カナタの言葉を聞かないで、一方的に言ってしまったから。
「…ヒメア、行こう」
なにかを知っているであろうソラは、私にはそれだけしか言わなかった。
結局カナタとはケンカをしたまま、カント国に向かったのだった。
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