【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい
 こんなこと、飛行機に乗って初めてのことだ。時々こうしたメッセージのサプライズがあることをSNSなどで知ってはいたけれど、まさかそれを自分が体験することになると思ってもみなかった。驚いた私は、お礼を伝えるどころか何も言えず、会釈をして飛行機を降りた。

 ボーディングブリッジを渡って手荷物受取場へと向かった私は、まだ荷物は出てこないだろうと、先にトイレで用を足すことにした。

 トイレを済ませ、洗面台で手を洗い、バッグの中からハンカチを取り出した。

 ああ、飛行機の到着が遅れたこと、連絡してないや。
 家に帰っても、母は仕事に行って誰もいないけれど、連絡だけは入れておこう。

 私はトイレを出ると、邪魔にならない場所でバッグの中からスマホを取り出そうとしてふと気付いた。

 あれ? 家の鍵がない。

 いつもだと、家の鍵と車の鍵を一緒にくっつけていて、バッグの中でその存在感があるからすぐに気が付くけれど、家から空港へ来る時、電車やバスを利用したため車を使わないから鍵を別々にしていたのだ。
 車の鍵は家に置いてきたからいいとして、家の鍵がないと、大変なことになる。

 いったいどこに落とした……?

 私はその場にしゃがみ込むと、バッグの中をひとつひとつ探していく。バッグの内ポケットやポーチの中、ありとあらゆるところを見るけれど、それらしきものは見つからない。

 もしかして、飛行機の中で落とした……?
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