【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい
『本日は、エアラインジャパン六百八十五便、羽田発松山行きにご搭乗いただき、誠にありがとうございます。機長の藤川(ふじかわ)です。途中、台風二十一号の影響による乱気流の影響で、皆さまにご心配をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。当機は定刻より三十分遅れましたが、無事に目的地である松山へ到着しましたことを、ご報告いたします』

 飛行機が無事に松山へ到着したことで、機内の乗客は棚上に乗せていた荷物を下ろしたり、シートベルトを外して通路に並んだりと、みんな飛行機から降りる準備に余念がない。

 機長アナウンスは、乗客のざわめきに掻き消されてところどころ聞き取りづらかったけれど、事故もなく無事に松山へ戻ってこれたことをようやく実感できた。

 私はみゆきちゃんからシール帳を返してもらうと、バッグの中へしまい、席を立つ。
 続いてみゆきちゃん親子が席を立ち、私の後ろに続いた。

 飛行機の出口で、客室乗務員さんが乗客をひとりひとりお見送りしている姿が見えた。私もお世話になったお礼を伝えようと口を開いたその時だった。

「お客さま、先ほどはお隣の座席のお客さまのご対応、ありがとうございました」

 客室乗務員のひとりに声をかけられ、お礼が書かれたカードを手渡された。その乗務員の胸元には名札があり、桜田(さくらだ)と読めた。
 手渡されたカードは空を飛ぶ飛行機の図案で、そこにはお礼とともに、この便名と客室乗務員一同と書かれている。

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