【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい
 スーツケースを手に取ると、ちょうど先ほどの乗務員たちが通路を通って手荷物受取場に現れた。私は一瞬そちらに視線が向いたけれど、早く家に帰ろうと到着ロビーへ向かおうとしたその時だった。

「あの、先ほどはありがとうございました」

 背後から、みゆきちゃんのお母さんが私に声を掛けた。
 みゆきちゃんは長旅で疲れたのか、お母さんに抱っこされている。

 お母さんの荷物に目をやると、私のスーツケースよりも少し大きめなスーツケースがひとつと、そこに買い物で使うエコバッグがいくつか括りつけられている。

「いえいえ、そんなお気になさらずです。それより、荷物、大丈夫ですか? 空港からはどうやってお帰りですか?」

 みゆきちゃんを抱っこした状態で、この荷物を運ぶのはかなり大変そうだ。

八幡浜(やわたはま)行きのリムジンバスに乗るんですけど、すぐにバスが来る予定なんです。予約してるから、多分置いて行かれることはないと思うんですけど……」

 お母さんはそう言うけれど、みゆきちゃんを抱っこした状態で荷物を運ぶのは大変そうだ。

「じゃあ、よろしければバス停までご一緒しますよ。荷物、私が運びますので、そのままみゆきちゃんを抱っこしてあげてください」

 私も休日桜子とよく遊ぶので、小さい子がこうして途中で電池が切れたように、突然動かなくなることは想定内だ。
 私の声に、みゆきちゃんのお母さんは驚いた表情を浮かべるも、きっとバスの時間が迫っていたのだろう。「じゃあ、お願いします」と、素直に私の提案を受け入れてくれた。

 私たちはそのまま到着ロビーから、バス停へと向かう。
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