【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい
 母はそう言って、料理を作るため裏に下がった。

「やった、これで美樹ちゃん公認じゃ!」

「梢子ちゃん、ええ彼氏ができてよかったのぅ!」

「えー、マジで? 梢子ちゃん、おめでとう!」

 山中さん、武田さん、太田さんの順に口を開き、この場は収拾がつかなくなっている。

 藤川さんは嬉しそうに「ありがとうございます」と言っているけれど、私は状況が理解できず、空のグラスを持ったまま、その場に固まった。

 なにこれ、彼氏ってどういうこと……? え、今の流れで私、告白なんてされてないんだけど……?

 頭の中に浮かぶ疑問が一つも解消できないうちに、話はどんどん盛り上がっていく。

「ところで藤川さん、今日は何時の便でこっちに来たんですか? 観光とかされましたか?」

 そんな私の様子に気付いた太田さんが、話題を変えようと藤川さんに質問した。

「今日は昼前に着く便でこっちに来たんですよ。なので日中は松山城へ行ったり、道後温泉に浸かったりと満喫しました。この前はどこにも行かなかったので、今回はちょっと観光ができてよかったです」

 藤川さんの答えに、みんながうんうんと頷いている。

「せっかく松山に来たんやけん、時間があるならほかにもいろんなとこ観光して行ったらいいわい。今回はいつまで滞在するん?」

 今度は山中さんが藤川さんに問い掛ける。山中さんは藤川さんのリップサービスに気をよくしたのか、さらに砕けた口調になって方言丸出しだ。
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