【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい

「今日は本館の温泉に浸かったんですか？」

「うん。本館は有名だから、一度は入ってみたかったんだ。梢子さんは地元だし、よく浸かりに来たりするの？」

「いやぁ、道後に住んでるなら温泉を頻繁に利用したりすることもあると思いますけど、私はほとんどないですね」

　私が小さい頃、家の風呂の調子が悪い時に利用したことがある。でも、本館や別館は観光客が多いので、利用するのは地元民がよく使う椿の湯だった。

「そっか、でもよく言うよね。観光地って地元民はほとんど行かないって」

「そうですね。松山城も、学校の遠足で行ったくらいで、自ら行こうとは思いませんね。城山公園は、市民会館もあるのでイベントがある時に行くことはありますが、お城には行かないかな……」

　私の言葉に、藤川さんも頷いている。

「とりあえず、道後温泉別館の場所はわかったし、さっきの道を反対に行ってもいい？」

　どうやら道後温泉本館の方向へ向かうようだ。

　私は頷いて、今来た道を引き返し、アーケードを直進した。

　突き当たりに道後温泉本館があり、日中は道後商店街入口と本館入口に人力車がある。けれど、営業時間が終了しているせいか、普段人力車が置かれているスペースはがらんとしている。

　日も暮れてライトアップされた本館前で、記念撮影をする観光客も多い。