【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい

　今の職場に就職してから、店の外で会う人たちに同じことをよく言われるようになったのだ。お店に入ると、洋菓子特有のとても甘い匂いがする。その匂いが私の服や髪の毛に染みついているのだ。特に今日は仕事上がりでそのまま道後へ直行したので、尚更だろう。

「きっと職場の匂いが染みついてるんですよ、よく言われます」

　歩いていると、突き当りに差し掛かった。右に曲がればアーケードは続いているけれど、藤川さんは左が気になるようで、私たちは一旦左へ曲がった。

「ここに道後温泉の別館、飛鳥乃温泉と椿の湯があるんです」

　アーケードを左折してすぐ、右側にある建物を指差した。

　椿の湯と飛鳥乃温泉の施設は隣接しており、道後温泉本館は、先ほどのアーケードの突き当りを右折した突き当りにある。

「ああ、ここが……」

　藤川さんはそう言うと、ポケットの中からスマホを取り出し、写真を撮影した。

　飛鳥乃温泉は飛鳥時代の建築様式を取り入れた湯屋がコンセプトで、外観もちょっとおしゃれだ。また大広間の休憩室や個室、特別浴室などを別料金で利用することもできる。

　椿の湯が地元の人が慣れ親しむ公衆浴場とすれば、観光を目的とする本館や別館の飛鳥乃温泉は、主に観光客の利用が多い。