【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい
 さっき店内で藤川さんが話していたこと、本当かな。本当に、私に会うため休みを取って来てくれたのかな……

 あの日の約束を果たした藤川さんの行動力には私を含めみんなが驚いていたけど、私みたいに何の取り柄もない、田舎者のどこが気に入ったのだろう。

 五分くらいたったところで、藤川さんが小さなくしゃみをしたので足湯から足を出した。
 手足は温かいけれど、夜風が冷たくてこれ以上外にいると、藤川さんが風邪をひいてしまいそうだ。

 私は藤川さんにタオルを使ってもらおうとタオルを差し出したけれど、自分は後でいいと言ってなかなか受け取ってくれなかったので、先にタオルで自分の足を拭った。

 タオルを手渡し、藤川さんがタオルを使っている間に、私は自分の足に靴下を履く。

 藤川さんが足を拭き終えたので、私はそのタオルを回収すると、その間に藤川さんも靴下を履いた。
 手足はポカポカしているけれど、背中など、身体が冷えてしまっている。

「すみません、温まるはずが逆に冷えちゃいましたね。寒くないですか?」

 私の問いに、藤川さんが即答する。

「寒いです。だから梢子さん、ちょっと俺を温めてください」

 その声の直後、私は藤川さんに抱きしめられていた。
 何が起こったかわからず、私はその場で硬直するように立ち尽くしていると、藤川さんが私の耳元で囁いた。

「俺、梢子さんに会いに来るって、ちゃんと約束を果たしたよ。きちんと自分の気持ちを伝える前に、店にいる人たちには暴露して順番が逆になってしまったけど……。俺、梢子さんのことが好きだ」

 突然の告白に、私の心拍数が急激に上がった。
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