【12/31引き下げ】クールなパイロットは初心な新妻を身籠らせたい
 紫電改とは、ゼロ戦に代わる幻の戦闘機だ。
 昭和の後半に、この機体が海底に原型のまま沈んでいるところを発見され、引き上げられた後展示されている。

 紫電改の話をすると、藤川さんが身を乗り出して反応した。

 これは宇和島方面で決まりかと思ったけれど、再び藤川さんは「じゃあ北は?」と私に問うので、今治からしまなみ海道を渡るプランを提案した。
 藤川さんは、どれも捨てがたいと頭を悩ませている。

「車があると、本当に行動範囲が広がるんだな。マジでどれも捨てがたい……」

「藤川さんの帰る時間に合わせるなら、今回はそこまでの遠出は難しいですよね。せっかくだから観光もしてもらいたいし、今回は松山市内でもいいですよ? 今日、どこを観光されました?」

 明日の夕方に東京へ戻るなら、あまり遠出はしないほうがいいのでは……
 私の心配をよそに、藤川さんはすでに遠出する気満々だ。

「今日は松山城へ行って、ロープウェイ街と大街道(おおかいどう)銀天街(ぎんてんがい)、道後を散策してきたよ」

 すでに道後も散策済みなら、道後の観光施設は無理だろう。

 遠出する気になっているようだし、藤川さんの行きたいところへ行くのが無難だと思った私は、藤川さんが行きたい場所を決めるまで黙っていることにした。
 藤川さんは自身のスマホを取り出して、愛媛県の地図を画面いっぱいに写し出し、私が提案したルートを見ている。

「ちなみに、西のルートのみ高速は通っていないので、一般道を走ります」

 隣でスマホの画面を覗き込みながら説明すると、藤川さんは、じゃあそれにしようと決断し、明日のルートが決まった。

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