蓮音(れおん) ―君に遺した約束―
第11章『仲間たちへ告げる時』

ーー

お腹はさらに膨らんで
外を歩いていても

もう誰が見てもわかるくらいになっていた。

 

不死蝶會の仲間たちも――
すでに、全員気づいてた。

 

「おーい美咲、腹デカなったなぁ」

「蹴ってんのか?元気だなぁ」

 

顔合わせ以降
みんな美咲に声をかけてくれてた。

 

この空気が
いつの間にか心地よくなってきてる自分がいた。

 

ーー

 

けど――

 

正式にはまだ
何も俺の口からは話してなかった。

 

 

妊娠のことも
結婚のことも

 

組の中では
自然と察して受け止められてきてたけど

 

“総長として”
きちんと口にするべきタイミングが

いつかは来ると思っていた。

 

 

そして、その日が来た。

 

ーー

 

幹部だけを集めた夜

 

いつものガレージの奥
慣れた面々が集まる。

 

副長の圭悟
幹部の哲
古株の冬馬

 

もう長い付き合いの仲間たちだ。

 

 

「さて、今日は何の集まりだ?」

 

圭悟が軽く冗談を飛ばす。

 

哲も腕を組みながらニヤついた。

 

「総長の顔見りゃ大体わかるよ」

 

「…今日は”大事な話”だな?」

 

 

俺は軽く頷いて
静かに椅子に腰を下ろした。

 

 

「お前らも――
もう全部わかってるとは思う」

 

「美咲の腹ん中には…俺の子がいる」

 

全員の表情は、静かだった。

 

誰も驚かねぇ。

 

とっくにわかってたことだからだ。

 

 

「……でも、今日ここで改めて話す」

 

「これから先」

 

「俺は”家族”を持つ」

 

 

「美咲と――
子供を守る」

 

 

一言一言
噛み締めるように言葉を出した。

 

「それが俺の人生になる」

 

 

静かな沈黙。

 

でも
張り詰めた空気は無かった。

 

ただ真剣に
全員が聞いてくれてた。

 

 

冬馬がふっと息を吐いた。

 

「…お前が、そこまで腹決めてんなら
俺らが言うことなんてねぇ」

 

「守るもんができた総長なら、余計に頼もしいわ」

 

 

哲も頷く。

 

「美咲ちゃん、可愛いもんなぁ」

 

「良い母ちゃんになるよ」

 

 

圭悟が最後に
少し笑いながら口を開いた。

 

「まさか俺らの総長が
こんな日を迎えるとは思わなかったけどな」

 

「――でも、悪くねぇよ」

 

「俺たち、全力で支える」

 

 

俺は
ゆっくりと頷き返した。

 

 

「……ありがとう」

 

「頼む」

 

 

こうして――

 

美咲と生まれてくる命は
俺だけじゃなく

 

“不死蝶會全体”が守るべき存在になった。

 

 

背負うもんは
確かに重くなった

 

でも――

 

この重さなら
悪くねぇ。

 

むしろ
生きる意味をくれてた。

 

 

夜のガレージは
静かに、優しく風が吹いていた。

 

ーー
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